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6 ドブ川と銭湯

銭湯


 ドブ川を歩くとよく銭湯に遭遇する。
暗渠になったドブ川跡を歩いてみても、やはり川跡沿いに銭湯をよく見かける。これはどうも偶然とは思えない。ドブ川歩きにタオルと石鹸を携帯するようにして、銭湯に遭遇すると入浴して解明に努めたのだが、理由が見えてこない。銭湯は江戸時代の頃からあるが、昔の資料を見てもよく分からない。
 川の水を風呂で使うためなのかとも思ったが、今ある銭湯の多くができたのは人口が急増した戦後であることを考えると、戦後急速に汚染されたドブ川の水を使うとも思えない。

 銭湯は川の水は使わないが、地下水を使っているところはけっこうある。
 平成15年の東京都の統計によると、都内の地下水揚水用の井戸のうち、銭湯(公衆浴場)用のものは全体の34%を占めていて、銭湯における地下水の重要さがわかる。

  参考:都内地下水揚水の実態 東京都環境局HP
  ・平成15年のものは掲載されなくなったので平成23年版をリンクした。
  ・ここの7ページのデータだと本数比22%に激減している。揚水量ベースだと全体の3.5%。
  ・ちなみに揚水量が一番多い業種は自治体の水道事業で68.1%、次いで食料品・たばこ製造業6.0%、公園・遊園地3.6%、公衆浴場3.5%と続く。H25.10.7追記)

* * * * *
 
 ただし揚水量で見ると他業種を含めた全体量の3%程度でしかないから、量としてはそれほど水を消費していないのであるが、地下水の確保は重要な課題となる。そこで私はこう推測した。

「川沿いはその地域で一番標高が低い。よって標高の高い土地よりも簡単に地下水のある地層を掘り当てて井戸を掘ることができる。そこでそのような場所に銭湯が立地した。」

 しかしある保健所に尋ねたところ、これは決定的な理由ではないことがわかった。ある程度の量を良好な水質で得る必要のある銭湯は、浅井戸でなく深井戸を掘らなければならないからである。地下何十メートルもの深井戸を掘るのなら、標高が数メートル高いか低いかなどあまり関係ない、そういうことのようであった。ではなぜ銭湯は川沿いに多いのか。 

 「川沿いは排水に適しているからではないか」
 銭湯の番台や井戸掘りの業者や業界団体まで手当たりしだい聞いてぼんやり出た結論がこれである。しかしどうもはっきりした確証が見つからない。銭湯関係者にとって一番頭が痛いのは燃料問題で、水、特に排水はどうも関心を持たれにくく、忘れられやすいようである。
 こういう場合に役に立つのが法律である。法律というものは現実社会で何か問題が起きてから作られる。したがって書いてあることが微妙に時代遅れである。「時代遅れ」とはよく言えば「昔のことが分かる」ということで、そこを利用する。

 下水道が普及している都会では銭湯の排水は下水道に流されるが、昔は下水道がなかったので側溝などに流すことになる。そこで、銭湯を作るときには必ず排水設備をしっかり作るよう、法令が定められた。
 厚生労働省が定めた「公衆浴場における衛生等管理要領」には、「浴場の汚水を屋外の下水溝、排水ます等に遅滞なく排水できる排水溝等を設けること」という一文がある。この一文はおそらくまだ下水道の発達していなかった時代に作られたものとみえる。ドブ川沿いの銭湯は法令の排水基準を容易に満たすための立地であった、そういう推測が成り立つ。

 参考:公衆浴場における衛生等管理要領(厚生労働省HP)

 これを実際に見て納得したのは静岡県のある銭湯に入ったときのことである。この銭湯は風呂の排水を敷地の横の側溝に流しているのだが、その量が結構多い。お湯が絶え間なく流れ出ている。銭湯にとって重要なのは給水よりも排水であることを私はようやく実感した。

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プロフィール

大石俊六

Author:大石俊六
掲載雑誌
雑誌「『広告|恋する芸術と科学』2014年10月号(特集|Tokyo River Story 東京、川ろうぜ。)『私はどうしてドブ川を覗き込んでしまうのか』

マーガレットプレス 連載『ギモンの細道』

・「ラミネート」
(第10号/ラミネートを発明した人はコンブを手本にしたのではないか、の巻)

・「人馬平安散」
(第9号/「金はなぜ貨幣に使われるのか」を調べていたら四ツ谷駅前のハイフキヤドラッグにたどり着く、の巻)

・「恋とはどんなものかしら」
(第7号/オペラ『フィガロの結婚』で資本主義の発展の秘密にたどり着く、の巻)

・「神社と石橋」
(第6号/神社の前にはなぜ石橋があるのか、の巻)

・「夏帽子製造工場」
(第5号/鮫洲にあった紙帽子工場を調べたら横浜の三渓園にたどり着く、の巻)

・「イベリア半島の睡魔あるいは美しき怠惰」
(第4号/スペイン人はただ暑いからという理由だけで昼寝しているのか、の巻)

・「靴下のゴムはなぜ伸びるのか」
(第3号/靴下のゴムが緩む原因を調べたら長篠の戦にたどり着く、の巻)

・「シュロの奏でるハ短調」
(第2号/シュロの木を植える習慣は南国への憧れのほかにもうひとつ理由がありそうである、の巻)

また、季刊collegio(38,39号)には「水路敷区道扱い」というエッセイを書いています。
・「戸越公園の水路敷」(38号)
・「水路敷と銭湯」(39号)

その他の作品(文芸誌「フノリ」に掲載)
・「海抜の季節風」(渋谷川暗渠区間の高度をしつこく探求)
・「着席自由権」(パリのカフェのカウンター席とテラス席の料金差と客の滞在時間の関係を現地でしつこく調査)

カテゴリ
「日本のドブ川」カテゴリを廃止して「法律からアプローチする」を新設しました。ドブ川を全国レベルで捉えると、どうしても法律の話メインになるのでこのように変更しました。(H26.11.15)
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