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7 ドブ川と美容室

 美容室

 ドブ川と銭湯の関係は分かったが、どうも川沿いに多いのは銭湯だけではないことに気付いた。
 例えば商店街がドブ川(もしくは川跡)を横切るとき、その交差ポイントはクリーニング店や美容室の指定席である。ほかにもプール、テント製造業、神社、米屋、酒屋もドブ川沿いに多い。
 こう書くと、なんでもありのようだが例えば本屋や文房具屋や学習塾はあまりドブ川沿いにない。ドブ川と上に挙げた9種の施設にいかなる共通点があるのか。
 これを解くにはいくつかのグループに分類して考えなければならない。

  ①クリーニング店、美容室、プールのグループ
  ②米屋、酒屋のグループ
  ③神社
  ④テント製造業

 まず①。これは一見お互い関連なさそうな業種であるが、事情は前回の銭湯と同じで、排水設備について法令であれこれ決められているという点が共通している。戦後の日本ではいかにして不衛生な状況をなくして伝染病を防ぐかが至上命題であったらしく、水を使う業種ではその排水が滞留して不衛生になることが何よりも嫌われた。
 そこで水を使うこれらの業種の法令には、「速やかに排水できる設備を設けること」といった条文が必ずある。当時は下水道が普及していなかったが、逆に言えば当時は速やかに排水できればどこでもよかったのであって、それがドブ川沿いだったということになる。

参考:「クリーニング所における衛生管理要領」(廿日市市のHP)

 ①が戦後の時代背景を映しているのに対して、②はもっと昔、精米が水車動力で行われていた時代背景を映している。川沿いに水車を設置して精米ができることが米屋の条件だった。酒造に米が必要な造り酒屋も同様である。

 ③は、さらにもっと昔からの宗教施設である神社の世界観を表している。神社は神聖で清浄な場所とされるが、そのためには周りとの境界を示す構造物が必要となる。鳥居やしめ縄がそうであるが、神社の前に水の流れる世界があって、橋を渡らないと入れないようになっていることもそのひとつのようである。

 ④はいまだに分からない。しかし川沿いに多いのは事実である。

 こうしてみると、ドブ川沿いの業種別の立地は昔の事情に拠っていることが分かる。
 今は下水道が整っているので、美容室もクリーニング店もドブ川を頼る必要はないのだが、昔からの店はそのまま存在していたり、オーナーが変わってその業種が引き続き存続したりする。

クリーニング店
緑道となった川跡のほとりにあるクリーニング店(東京都目黒区)


コメント

非公開コメント

Re: No title

lotus62さま
目から鱗のコメント、ありがとうございます。
私は思い至りませんでしたが、「水の利権を利用した求心力キープ」説、
確かにありそうですね。

私はどちらかというと、「あの水は○○神社さんのとこの水だから汚すなよぉ」というような感じで
利水モラル維持のために神社があったのかなと思っていましたが、それは当然求心力をキープしてこそ
成り立つものなのでしょうね。

水が宗教施設から湧き出る形式は、キリスト教の教会前やイスラム教のモスク前でも見られますから、
万国共通の仕組みなのかもしれませんね。
lotus62さんのコメントのおかげで、またいろいろ調べると面白そうなことが出てきました。
これからもよろしくお願いいたします。

No title

たいへん興味深く読ませていただいています。
先日は拙ブログへのコメントありがとうございました。
さて、③の神社についてです。お察しの通り禊などの宗教的な理由も多いにあると思いますが、
各地の風土記など覗いていくと、もうすこし「実用的」な理由も複合的にあるのかな、
と思うようになってきました。
すなわち、「水の利権を利用した求心力キープ」です。
水は住民にとって貴重な生活資源であり、(農作物の)生産資源です。
寺社仏閣が古くから湧水地をおさえてこれを近隣の民に分配することで、
民から「あそこの○○神社さんの神様はほんとうにありがてえなあ」という
畏敬の念や求心力(時にはちいさな?権力)を得ていたのではないか、ということです。

①、②についてはまったくその通りと思っています。
④は・・・・残念ながらいままで気がつきませんでした(笑)。今後気をつけてみてみます!!!

今後の更新を楽しみにしております。
どうぞ今後とも、よろしくお願いいたします。

Re: 雲が流れる如く

kurakichiさま
お読みくださりありがとうございます。
kurakicihiさまのブログにのっていた、原宿の川跡沿いに多い美容室の件、
とても気になりました。それらがいつの頃からあるものか、調べてみたいと思います。


雲が流れる如く

拙ブログにコメントをいただきありがとうございます。
ドブ川にまつわるお話 興味深く読ませていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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プロフィール

大石俊六

Author:大石俊六
掲載雑誌
雑誌「『広告|恋する芸術と科学』2014年10月号(特集|Tokyo River Story 東京、川ろうぜ。)『私はどうしてドブ川を覗き込んでしまうのか』

マーガレットプレス 連載『ギモンの細道』

・「ラミネート」
(第10号/ラミネートを発明した人はコンブを手本にしたのではないか、の巻)

・「人馬平安散」
(第9号/「金はなぜ貨幣に使われるのか」を調べていたら四ツ谷駅前のハイフキヤドラッグにたどり着く、の巻)

・「恋とはどんなものかしら」
(第7号/オペラ『フィガロの結婚』で資本主義の発展の秘密にたどり着く、の巻)

・「神社と石橋」
(第6号/神社の前にはなぜ石橋があるのか、の巻)

・「夏帽子製造工場」
(第5号/鮫洲にあった紙帽子工場を調べたら横浜の三渓園にたどり着く、の巻)

・「イベリア半島の睡魔あるいは美しき怠惰」
(第4号/スペイン人はただ暑いからという理由だけで昼寝しているのか、の巻)

・「靴下のゴムはなぜ伸びるのか」
(第3号/靴下のゴムが緩む原因を調べたら長篠の戦にたどり着く、の巻)

・「シュロの奏でるハ短調」
(第2号/シュロの木を植える習慣は南国への憧れのほかにもうひとつ理由がありそうである、の巻)

また、季刊collegio(38,39号)には「水路敷区道扱い」というエッセイを書いています。
・「戸越公園の水路敷」(38号)
・「水路敷と銭湯」(39号)

その他の作品(文芸誌「フノリ」に掲載)
・「海抜の季節風」(渋谷川暗渠区間の高度をしつこく探求)
・「着席自由権」(パリのカフェのカウンター席とテラス席の料金差と客の滞在時間の関係を現地でしつこく調査)

カテゴリ
「日本のドブ川」カテゴリを廃止して「法律からアプローチする」を新設しました。ドブ川を全国レベルで捉えると、どうしても法律の話メインになるのでこのように変更しました。(H26.11.15)
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